天文ガイド 惑星の近況 2018年5月号 (No.218)

堀川邦昭、安達誠


明け方の南天に3大惑星が並んでいます。 木星は3月9日にてんびん座で留となり、逆行に移りました。 ひとつ隣のさそり座の北には火星がいます。 さらにその先のいて座では南斗六星の先端に土星が見られます。 南天低く、高度は30〜40°程度ですが、春の好シーイングを期待したいところです。

ここでは2月半ばから3月初めにかけての惑星面についてまとめます。 この記事中の日時は、すべて世界時(UT)となっています。

木星

木星面では南熱帯攪乱(South Tropical Disturbance)と大赤斑(GRS)の会合が進行中です。 注目される攪乱前端の大赤斑前方へのジャンプはまだ起きていません。 攪乱前端は1月に急加速して2月初めには赤斑湾(RS bay)の後端に到達しましたが、その後減速し停滞してしまいました。 3月になり90日周期の振動運動をしている大赤斑が再び後退期に入ったので、進展が期待されましたが変化はなく、むしろ大赤斑の後退によって攪乱前端が押し戻されているような気配すら感じられます。 今後もしばらく予断を許さない状況が続くと思われます。

攪乱全体は30°の長さがあり、南赤道縞(SEB)南縁が厚く盛り上がって乱れています。 後端の暗柱は淡くなりましたが、南熱帯(STrZ)にははっきりとした明暗境界があります。 不規則な動きの前端と異なり、後端のドリフトは1日当たり-0.1°で変化ありません。

南温帯縞(STB)では、青いフィラメント領域であったSTB Ghostと永続白斑BAとの衝突現象(STB Ghost outbreak)が進行中です。 2月初めに出現したメタンブライトな白斑は、その後東西に流れて攪乱模様を発達させ、STB Ghostの輪郭や内部の明暗が増幅することで濃化し、可視光でもよく見えるようになりました。 そして元々BAの後方にあった暗斑(STB Remnant)と一体になりながら、長さ50°のベルトの断片になりつつあります。

もうひとつの青いフィラメント領域であるSTB Spectreは、大赤斑の少し前方にあります。 本体は相変わらず淡いのですが、後端と大赤斑の間が濃化してきました。 こちらも注意を払う必要がありそうです。

[図1] STB GhostとBAの衝突
左端がBA。STB Ghostがベルト化する様子がわかる。
[図2] 南熱帯攪乱のドリフトチャート
一度追いついた攪乱前端が後退する大赤斑に押し戻されているように見える。
[図3] 木星面展開図
3月3日〜5日に観測された6画像から作成。大赤斑後方に南熱帯攪乱が迫る。永続白斑BAの後方にはSTB Ghostが濃化してベルトの断片となっている。NEB北縁が淡くなり、暗斑や白斑が多数形成されている。

■火星

火星は夜明け前で南南東の空30°近くにあります。 かなり明るくなってきました。 視直径は6秒を越え、シーズン初めと比べると2倍近い大きさになり、模様も見やすくなってきています。 また、大接近らしく急速に南半球が地球に向いてきて、南極冠が見えてくるのも時間の問題でしょう。 南極地方の雲が毎日記録されるようになってきています。

2月13日にはHellasの南に灰色の雲が観測されました。 条件の良いときの観測は少ないものの、この位置はちょうど南極冠最大時の縁に位置します。 灰色の雲は季節極冠の可能性もありますが、白い輝きはなく、極冠とはまだ言えません。 3月5日には、南アフリカのフォスター氏(Clyde Foster)が赤画像で輪郭線のような姿を記録しています。 赤画像やIR画像での様子を見守っていきたいと思います。

2月15日にNoachisの南部でダストストームが発生しました。 今シーズン最初の確認となりました。 15日の画像ではHellasの南西部がダストストームで隠されています。 二人のみの観測ですが貴重な観測となりました。 その後、この一帯は拡散したダストのベールに包まれ、見えにくくなりました(図4)。

3月1日にはフォスター氏が、火星の南半球のよく晴れた状況でSolis Lacusを記録し、細い半月上の形を捉えています。 良い条件での観測が少なく、日数を費やしましたが、これで火星面の模様の状況が概ねつかめました。

[図4] Hellasにかかる黄雲
Hellas南西部が隠され、楕円形に見えなくなっている。撮像:ダミアン・ピーチ氏(英国、35cm)

土星

土星の環は、現在+26°で最も開いた状態にあります。 土星本体は環に包み込まれ、A環が外側を取り巻いています。

土星本体は概ね変化ありません。 クリーム色の赤道帯(EZ)は明るく、北赤道縞(NEB)が二条のベルトとして見えています。 昨シーズン末に赤みを帯びた北極地方の外側の領域は、現在も暗いオレンジ色をしています。

[図5] 環が開いた土星
撮像:クライド・フォスター氏(南アフリカ、35cm)

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