天文ガイド 惑星の近況 2018年1月号 (No.214)

堀川邦昭、安達誠


7月末に15年ぶりの大接近となる火星が、明け方の東天に姿を現しています。 まだ遠く小さいのですが、熱心な観測者はもう観測を始めています。 土星は夕暮れの南西天低く見えていますが、12月の合に向かってどんどん高度を下げています。 木星は10月27日に合となり、明け方の東天に移りました。 熱心な観測者が早くも撮像を始めています。

ここでは10月半ばから11月初めにかけての惑星面についてまとめます。 この記事中の日時は、すべて世界時(UT)となっています。

火星

いよいよ大接近の年を迎えます。 2003年以来15年ぶりのことになりますので、期待している人も多いことと思います。 最接近は7月31日で、視直径は24.3秒まで大きくなります。

1月から3月までの火星は、視直径は小さいものの、地球からは北半球がよく見えます。 3月になると南半球が地球の方を向いてきますので、南極周辺が見やすくなってきます。 大接近のときはいつも南半球がよく見える位置回りとなります。 4月半ばになると南極付近は雲の淡くなった部分に、大きくなった南極冠が姿を現します。 その後、視直径は大きくなりながら、最接近に向かって南極冠が縮小していく様子が観測できるようになります。 南極冠がいつから、どの経度で見えてくるかが観測の注目点になるでしょう。

6月になると南極冠の中央に暗部ができ、極冠の周縁部には輝点が見られ、複雑な姿が見えるようになります。 視直径も大きくなり、詳しい観察ができるようになるでしょう。 また、この頃からはダストストームの発生に注意が必要になります。 ダストストームを見つけるには、普段の姿を覚えておくか、前の日など過去の姿と比較することが必要です。 時には大規模なダストストームに覆われ、火星の模様がすべて見えなくなることもあります。 発達過程は、火星観測の醍醐味と言ってもいいでしょう。

近年注目されている観測対象は、火星の高高度に出てくる雲の発生です。火星のリム(欠け際)から外に飛び出るような姿になって見える、雲のでっぱりです。 大きなものは普通の撮影でも写りますが、露出を多めにかけることによってよりよく記録されます。 火星の観測は、何か目当てをもって継続されることをお勧めします。 極冠の様子を記録するには、極冠に露出を合わせた画像を撮るようにしましょう。 また、高高度の雲の監視をするには、露出を多めにしたものがいいでしょう。

火星像の周辺部には、いつも白雲が見られます。 また、夏からは低緯度地方に氷晶雲が目立つようになります(火星面の低緯度地方を淡い雲のバンドが覆うもの)。 これらは青画像で記録しやすくなります。 また、グリーンフィルターはダストストームを明るく記録します。 このようなフィルターを使った観測は、たくさんの観測者が使っているものに合わせると、自分の観測と比較検討ができるようになるでしょう。

撮像すると、画像処理を施しますが、強度の処理をすると、火星像の端の色や明るさがいびつに処理されてしまうことが多くなります。 火星は像の端にたくさんの重要情報が見えています。 火星の大気にダストが多いと、リムが黄色く写ります。 これは大気の状況を把握するのに大切な情報です。 処理しすぎないようにすることが大切です。

これから観測をする人が多くなると思いますが、有用な画像の取得を目当てにすれば、火星観測の面白さが増えてくるものと思います。 火星観測は、眼視でスケッチ観測をすることも大切です。 見て描くことにより観察眼を鍛えることができます。 観察眼が鋭くなると、画像からの情報の発見も鋭くなります。 観ることにもぜひ力を入れてください。

今シーズンの観測は、9月26日に横浜市の岩政隆一氏によって始まりました。 視直径4秒足らずの小さな画像ですが、主な模様が記録できています。

[図1] シーズン初めの火星面
(左)SyrtisやBoreo Syrtisが明瞭、北極冠には微妙な濃淡が見られる。(右)左下に北半球最大のMare Acidariumが見え、そのほかの主な模様も通常の姿が確認できる。撮像:岩政隆一氏(神奈川県、35cm)、熊森照明氏(大阪府、35cm)。どちらも赤色光画像。

土星

土星は環の傾きが15年ぶりの極大を迎えていますが、条件が悪く詳細を捉えることは困難な状況です。 幸い傾きの変化はゆっくりで、来年になっても+26°前後で推移しますので、見え方は今年とほとんど変わりません。

大きく開いている時は、カシニの空隙やエンケの空隙といった環の構造を観察しやすくなります。 一方、薄くてスカスカなC環は後ろの宇宙空間とコントラストがつきにくく、傾きが小さくなって、斜めに見るときの方がC環は見やすいようです。

土星本体は、北赤道縞(NEB)の南組織が濃く、北組織はやや淡く拡散しています。 また、その北側には北温帯縞(NTB)が幅広くボンヤリと見えています。 北極の周辺は薄暗くなっていますが、9月以降、少し赤みを帯びてきたように見えます。 通常は暗緑色ですが、時々大規模に赤くなることがあります。 最近では2014年に起こりましたし、2000年代には反対側の南極周辺でしばしば見られました。

NEB北組織の白斑は、今月は観測されていません。 その代わりに、マクソン(P. Maxson)氏(米国)とフォスター(C. Foster)氏(南アフリカ)のいくつかの画像で赤道帯(EZ)に白斑が捉えられています。 おおむねI=200〜300°の範囲に分布していますが、経度はかなりバラついているので、複数の白斑が存在するのか、それとも悪条件による擬似的な模様が含まれているのか、よくわかりません。

[図2] 土星の白斑
赤外画像。画像中央上のEZ内に白斑が見られる。撮像:ポール・マクソン氏(米国、25cm)

木星

今シーズン最初の観測は、11月4日の宮崎勲氏(沖縄県)によって行われました。 10月27日の合からわずか8日目という驚異的な早さです。 日の出の3分後、高度8°の木星画像で、さすがに北赤道縞(NEB)と南赤道縞(SEB)がかろうじてわかる程度で、木星面の詳しい状況はまったくわかりませんが、今後条件がよくなるにつれて明らかになるでしょう。

今シーズン(2018 Apparition)の木星はてんびん座へと移り、衝は5月9日です。 東京での南中高度は40°に届きません。 気流の影響を受けやすくなる上に、地上の建物や電線などに邪魔されることが多くなりますが、春の安定した天候が、それを補ってくれるはずです。 大赤斑(GRS)前方の南熱帯(STrZ)の暗部やmid-SEB outbreakの余波、南南温帯縞(SSTB)の白斑A1とA2の状況など、今シーズンも幕開けから注目すべき現象が数多く待ち受けています。

なお、英国天文協会(BAA)の最新のレポートを見ると、今回のSTrZの暗部は「S. Tropical Band(南熱帯紐)」となっています。 ディスロケーション(Dislocation)は、永続白斑が大赤斑を通過した際、ジェットストリームが特殊な配置になることで生じる明暗の逆転現象を指すようです。 今後はその定義にならって、今回の現象については南熱帯紐またはストリークと表記することにします。


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