天文ガイド 惑星の近況 2000年10月号 (No.7)
伊賀祐一
7月は梅雨空とはいいながら、次第に明け方の高度を上げている木星を22日(のべ96人)、土星を10日(のべ15人)観測することができ、今シーズンの模様の特徴がわかってきました。また、7月27日に西方最大離角を迎えた明け方の水星の観測も行われました。
木星:南熱帯のDark Streak
明け方の高度が高くなり、少し模様の詳細が見えかけた7月4日UT、前田和儀氏(京都)からGRS(大赤斑)直後のSTrZ(南熱帯)に暗柱らしき模様の写った画像が送られてきました。7月1日UTの画像では特に変化は認められませんでしたので、先月号で紹介したように、STrZの暗柱はSTrZ Disturbance(南熱帯撹乱)の可能性も考えられます。早期の追跡観測が必要なので、メーリングリストで観測の依頼を行ないました。今シーズンの観測を始めようとしていたメンバーも含めて、この情報に刺激を受けて、連日観測報告がメールで送られてきました。明け方の1時間程度の観測時間しか取れないこの時期は、3日に一度しかこの経度を見ることができません。 各地のメンバーの協力で、7月6日UTには、このGRS直後の暗部はDisturbanceではなく、SEBs(南赤道縞)の気流に乗った暗い物質がGRSの北側を回って、GRS直後のSTrZに留まっているものだと判明しました(図1-A)。この位置に暗部が形成されると、GRSの南側をぐるりと回る気流に乗って、さらにGRSの前方のSTrZに伸びるDark Streakに発達することが過去には多く観測されています。そして、予想通りに7月11日UTには、GRSから前方にStreakが観測されました。その後の観測で、このStreakは7月18日UTに30度、7月20日UTに40度まで伸びています(図1-B)。 このStreakの観測は、SEBsを後退してきた暗物質がGRSをぐるりと回り、一度GRS直後で留まった後に、さらにGRSを回り、今度はSTrZを前進するといった、ダイナミックな気流を見ていることになります。今後は、さらにStreakが前進し、STrZに新たなBandを形成するのではないかと期待しています。

図1 7月の木星の全周画像
7月16日−22日までのほぼ45度おきの画像で、木星の全周の様子を示します。
撮影/池村俊彦氏(31cm反射)、永長英夫氏(25cm反射)、前田和儀氏(35cm反射)(拡大)

●EZsの大白斑

EZs(赤道帯南組織)に巨大な白斑(GWS)が出現していましたが、このGWSはほぼ予想通りに7月23日UTにGRSの北側を通過しました。7月11日UTにはGWSに先行する白斑が、7月16/18日UTにはGWSがGRSの北側に接近する様子が見られました(図1-C)。7月23日UTにGRSを通過している様子がとらえられ、SEBnがかなり乱れています。しかしながら、GRSを通過した後はGWSははっきりしなくなり、いくつかの白斑と暗斑(図1-D)に活動が分かれたようです。 このGWSはほぼ50日毎にGRSを追い越していて、1999年10月の出現以来6回目のGRS通過でしたが、今回はGWS自身があまり活発でなかったためか、大きな変化は見られませんでした。阿久津富夫氏(栃木)の観測では、メタンバンドではこの白斑は逆に暗く写っており、高層まで達していないような白雲として奇妙な振る舞いを見せています。

●STBの合体白斑'BA'

3月21日UTにBEとFAが合体したSTB(南温帯縞)の新しい白斑'BA'が、ようやく白斑としてとらえることができました。気流が悪い7月上旬では見えにくい状態が続いていましたが、7月20日UTになってようやくII=327度に観測されました(図1-E)。BAの周囲が暗いエッジで取り囲まれていないのでむき出しの状態で見えにくいことと、青色光でやや明るいことなど、'BE'の合体直後の様相と同じです。今後、この白斑は渦としてしばらく継続するものと考えられますが、気流の安定する8月の観測に期待したいと思います。9月には第U系で310度付近に位置しています。
土星
今シーズンの土星は、環の傾きも大きくなり、南半球が良く見えます。EZに出現する白斑や、南極付近の赤い模様などの現象はまだ出現していないようです。土星と木星はともにおうし座の中にあり、近くにプレアデス星団やヒヤデス星団などとにぎやかな姿を見せてくれています。
図2 7月29日UTの土星

撮影/阿久津富夫氏(32cm反射)
※Webでの観測公開
最近の観測画像を以下のURLで公開しています。
http://www.kk-system.co.jp/Alpo
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