天文ガイド 惑星の近況 2000年7月号 (No.4)
伊賀祐一
木星
先月号で紹介しましたように、木星の永続白斑BEとFAは2000年3月21日頃に合体して、一つの白斑(これまでの慣習から'BA'と呼ばれる)になりました。合が近い厳しい条件でしたが、熱心なメンバーによって合体の過程を追跡することができ、3月27日に池村俊彦氏(名古屋市)と伊藤紀幸氏(新潟県)が合体した白斑を画像としてとらえることができたのは幸運でした。4月に入ると低空となってしまい、4月7日の観測が最後となってしまいました。

インターネットを通じてNASA IRTF(赤外)やピック・デュ・ミディ(近赤外、メタン)の画像が公開されています。条件に恵まれたこれらの高山に位置する天文台でも4月3日が最後のようで、現在合体の過程についての解析が進められています。

木星は5月8日の合の後、朝方の東天にまわり、6月中旬には初観測となります。といっても、細かな模様が確認できるのは7月に入ってからでしょう。白斑BAは、しばらくの間は大きな渦として存在していると予想されていますが、はたして健在でしょうか。

展開図の作成
太陽をかすめる彗星を数多く発見している太陽観測衛星SOHOの5月の画像(http://sohowww.nascom.nasa.gov/hotshots/)に、水星・金星・木星・土星が同時に写っていることからも、観測できる惑星は現在は太陽の近くにいます。惑星観測はしばらくの間はお休みです。この時期、反射鏡の再メッキ、望遠鏡の調整、CCDカメラのメンテナンス、たまった画像の整理、画像処理法の見直しなど、次の観測シーズンに備えています。

私もこれまでに自作した展開図ソフトウェアを、UNIXからWindows環境に移植を進めています。全ての画像処理をパソコンで行っていますので、展開図も同じ環境で使いたいと思って始めましたが、惑星の緯度の傾きに対応しようとか、ついでに経度と緯度を計測できるようなシステムにしようとか、構想が膨らんでしまいました。完成したら、いつか紹介したいと思います。

展開図は、木星の全面の様子を知るためには重宝なツールです。いくつかの円筒図法がありますが、一般的なメルカトル図法よりは、実際にながめている木星像と違和感の少ない等積円筒図法が良いと思います。1999年11月3-10日に得られた8枚の画像から作成した展開図を掲載します。

図 1999年11月の木星の展開図(Cylindrical Map)

池村俊彦氏が撮影した8枚の画像から自作ソフトウェアで作成
データ:310mm反射、デジタルカメラNECピコナ

SSTBに見られる6個の小白斑、大赤斑を追い越そうとしているSTB白斑のBEとFA、階段状に見えるSTB、北半分が全周に渡って淡化しているSEBとその南縁の暗斑の連鎖、大赤斑の後方のSEBに見られる定常的な撹乱状の明部、濃くなったEB、シーズンを通して追跡されたEZnの11本のフェストーン、中央部を白いリフト構造が走るNEBとその北縁のバルジや湾、比較的安定しているNTBなど、昨シーズンの木星面の特徴を読み取ることができます。

木星の模様は変化が早いので、このような展開図が1ヶ月単位で作成できると、模様の解析が容易になります。Webでいくつかの展開図を公開していますので、ご覧ください。

http://www.kk-system.co.jp/Alpo/

■木星観測リスト

1999-2000年の木星観測のメンバーの報告数をまとめました(五十音順)。
観測者スケッチ画像観測者スケッチ画像
阿久津富夫21嶋田俊之224
安達 誠149田中 実8
伊賀祐一981中西英和90
池村俊彦297新川勝仁185
伊藤紀幸34根市満之24
上野友久1林 敏夫8
永長英夫10堀川邦昭153
薄出敏彦9前田和儀105
奥田耕司74松田昭市19
忍穂井幸夫25米山誠一34
河原義則24
合計3331053

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