月惑星研究会例会通信 No.165

■ 日 時 : 2016年12月18日(日曜)13時−17時半

■ 場 所 : 明治大学生田キャンパス理学部5号館5203教室

■ 出席者 : 31名(敬称略、自己紹介順)

  鈴木 達彦、田部 一志、齊藤 美和、米井 大貴、吉田 順平、北条 雄大、永井 和男、
  斉藤 啓子、佐藤  伶、松岡 義一、佐竹 郁哉、龍華 良典、津田 洸貴、森谷  諒、
  大和田 篤、大熊 研太郎、成田  広、長瀬 雅明、鈴木 正治、小澤 徳二郎、岩政 隆一、
  米山 誠一、山崎 明宏、堀川 邦昭、石橋  力、水元 伸二、高橋  徹、高橋 和平、
  三谷 祥二、平林  勇、鈴木 光枝
          集合写真


■ 内 容

0.自己紹介

  鈴木(達):明治大学OB、月惑星研究会・?天体観測所・東亜天文学会・日本スペースガード協会に参加。
       天文以外では俳句で複数の句会に参加している。出身高の都立北高校の同窓会副会長を務めている。
       最近、堂平天文台を見てきた。近くにキャップ場やバンガローや宿泊施設があり、星が見れる
       サファリーパーク的な施設にする計画もあり、使えそうかも。1964年の天文年間に堂平天文台が
       出来たとの記事が載っている。堂平天文台に関しては20年ほど前にNHKの番組で星が見え難くなった
       天文台という番組に出演した。
  田部  :惑星は観測していない。ジャズを聴くのが趣味ので、ジャズ喫茶を営業したいと思っている。
       ブログ上では開店している。「木星ジャズ喫茶」。リアル店舗の開店には資金不足。
       自宅の駐車場を改造して天文台を造りたい。一千万円程度かかりそう。
  齊藤(美):木星ジャズ喫茶リアル店のママになるのが夢。1月14日(土)に船橋のプラネタリウムで
       上坂浩光(那須に天文台を保有し埼玉から遠隔操作で観測している)の講演会がある。
       講演会のテーマは「天体写真とやはぶさ2」、興味のある方は参加してください。
  米井  :中央大学3年、桐朋高校地学部OB、前回参加が1月だったので、ほぼ1年ぶりの参加。
       3月に海外旅行に行った。フィンランドでのオーロラ見物です。オーロラは一瞬で姿を変え、
       美しかった。また北の星座が高く見え、緯度の高さを実感した。10月に天体観察と地層観察を
       兼ねて伊豆大島に行ったが、天気が悪く星は見えず、霧で地層観察も満足に出来なかった。
       来年の米国皆既日食は暇が無いので行かない。
  吉田  :桐朋高校OB、中央大学地学愛好会2年、11月に文化祭がありプラネタリウムを行ったら
       カルチャー部門で1位となった。年末には冬の陣で岡山県に3名で行く予定。地学愛好会は
       名簿上は100名程度いるけど実質活動しているの僅か。
  北条  :明治大学天文部惑星班1年、木星会議の1日目に参加。木星会議以降は具体的な活動なし。
       今月は何か行いたい。
  永井  :茅ヶ崎から来ました。1970年頃から変光星を観測している。学生時代は、田部さんや鈴木さんと
       一緒だったが対象は惑星ではなかった。多種ある変光星の中でも食連星が対象で、大熊座の
       W型食連星Aを研究してきた。最近は太陽黒点や流星の研究や彗星の軌道計算も行っている。
  斉藤(啓):横浜市から来ました。平塚市博物館の天体観察会のメンバー。先週は変光星のゼミに参加。
       昨日は望遠鏡を外に出し易い様に部屋の模様替えした。望遠鏡は20cmのSC、CCDカメラも保有。
  佐藤  :東京理科大、今年から惑星班班長を引き受けた。月惑星研究会の例会に参加して勉強したい。
  松岡  :川崎市麻生区から来ました。30分程度で来れます。例会は3回目。天文の普及に関心がある。
       惑星研究の最前線の様子を知りたくて参加しました。
  佐竹  :明治大学天文部惑星班1年、今年の木星会議に参加したが、例会は初参加。今年は木星を
       CCDカメラで撮影した。例会で知識を得て、自分の活動に磨きをかけて行きたい。
  龍華  :明治大学天文部4年、今年の学祭には天体写真を提供したけど、当日は客として参加。
       学祭では、1年生が分かり易い説明を行っており、頼もしいと感じた反面、引退することが
       寂しく感じられた。気持ち良く引退して行きたい。
  津田  :明治大学天文部惑星班1年、今年の木星会議に参加したが、例会は初参加。これから色々と
       学んで行きたい。
  森谷  :明治大学天文部惑星班、11月までは惑星班班長で12月からは観測部長。9日10日に足柄観測所と
       その近くのグランドでふたご座流星群の観測を行った。極大のかなり前だったので1時間に4個
       程度しか見れず、満足できなかった。天文部では惑星班が最も多い。
  大和田 :明治大学天文部惑星班2年、惑星の観測は余りしていないが、先日、低空の火星を撮影した。
       その時に、熊森さんの様に鏡筒に穴を開ける位のことをしなければ良い画像は撮影できない
       ことを感じた。
  大熊  :明治大学天文部惑星班1年、佐竹さんと一緒に木星をCCDカメラで撮影した。
  成田  :天文関連の参加団体はJAPOS、月惑星研究会、川崎天文同好会、東亜天文学会。
       向ヶ丘遊園駅と中野島駅の中間付近に天文台を保有。建設から28年目、ドームの観測所に
       してから20年経った。現在、自宅と同時にリフォーム中。一般公開中だが、今は親子連れが
       主。望遠鏡はアポクロマートの20cm屈折、天王星や海王星も見れるが、一般の方向けではなく、
       木星・火星・金星から見て貰うのが良い。以前は学生も見に来たが今はほとんど来ない。
       惑星の観察や撮影も出来るので、学生の方々に見に来て欲しい。目が悪くなり惑星のスケッチは
       10年前から行っていないが太陽黒点観測は続けており48年目。天文台の利用は無料です。
  長瀬  :岩政さんブログに触発され、C9のCPを外し、内部の3ヶ所にファンを設置。主鏡に向けて
       光軸方向の気流を発生させ、外気温に近い鏡筒の勤続の温度を主鏡に送る様にした。
       シーイングが悪い時は何をやっても無駄だけど、シーイングが良い時は、鏡筒内に風がある方が
       平均的な像の安定度がある様に感じる。ゆっくりとした風を流した方が良さそう。
  鈴木(正):自宅は川崎の久地。東海大学天文部OB、大学天文連盟11代目事務局長を務めた。惑星ではなく
       流星を観測。卒業後は観測から遠ざかった。仕事が光学設計なので、太陽観測衛星「ひので」の
       コリメータの設計に携わった。最近ひのでの10周年記念が行われた。
  小澤  :八王子から来ました。木星と土星を主に観測している。惑星が見れない時に星雲・星団の
       撮影にのめり込み、2台目の冷却CCDカメラを購入。3月にインドネシアに日食を見に行った
       けど、雲って見れず、インドネシア観光のみ。9月末から10月始めにオーロラ見物にアイスランド
       で行った。7日間で2日だけだがオーロラを見れた。アイスランドは良いところ。冬でも
       それほど寒くなく、氷点下10度までは下がらず、カメラの防寒対策も不用。日食のリベンジで
       来年の米国日食見学ツアーを申し込んだが、92万円とかなり高額。
       今シーズンの木星はシーイングが悪く思う様にならない。今朝撮影した近赤外画像が初報告。
       35cmニュートン、温度順応は主鏡裏の3個のファンで行っている。前の自作30cmニュートンは
       トラス構造の開放タイプなので温度順応的は問題無かった。開放型は筒内気流は起きないけど
       周辺の気流に注意が必要。両方ともオライオン製だが、30cmは1/8λだが35cmは1/20λと鏡面
       精度が高く性能が良い。
  岩政  :情報公開の希望に応える為、10月にブログを開始した。可能な限り日々更新している。
       望遠鏡の筒内気流の影響を軽減するために、感覚的にではなく詳細な温度測定を行い望遠鏡の
       熱的な挙動を調べている。望遠鏡の仕組みは長い年月変わっていないが、現代的な装備を加えれば
       より高性能なシステムになるのではと考えている。現在、内部ファンで筒内気流を撹拌/
       スポットクーラーで冷却/ペルチェ素子で冷却の3種類の方法をトライしているが、それぞれ
       長所短所がある。ベストの方法を模索中。
       放射冷却もありえる開放鏡筒のニュートン主鏡と異なり閉鎖鏡筒のシュミカセは主鏡の温度が
       環境温度より下がることがないので、いかに主鏡の温度を下げるかが要点だと思っている。
  米山  :月惑星研究会以外では、我孫子や柏などの東葛西を拠点としている東葛星見隊に参加し、観望会
       で手伝いをしている。昨夜はその会の忘年会で飲み過ぎた。今年の一大イベントは、築30年の
       ボロ屋の建替えで、10月始めに解体し、やっと基礎工事の状態。4月頃に完成予定。
       屋上を活用して天体観測の予定。そこには冷房装置を設置予定。来年の米国皆既日食に行った
       積りで機材を調達したいと思っている。建替え中の仮住まい先は視界が悪く、木星が6時頃に
       やっと見え始めた状態で、観測は冬眠状態。
  山崎  :町田から来ました。自宅の駐車場の上に観測所を建設した。片開きのスライディングルーフで
       西側に開くので東は高度5度と視界が良い。望遠鏡はオープンフレームなので温度を気にした
       事はないが、シーイングが良くなく満足できる木星画像が撮影できていない。来年の米国の
       皆既日食ですが、ツアーは高過ぎるので諦めていたら、皆既食帯にあるホテルに空きがでたので
       予約できた。費用はツアーの一人分で二人で行ける程度と安価。現地での移動はレンタカー。
  堀川  :去年の秋からメニエール病で苦しんでいたけど、だいぶ良くなって来た。30cmの主鏡を
       再メッキに出し10月末に戻って来たので組上げたが、セルの関係で光軸が合わないのと鏡面圧迫が
       あり悩まされている。だいぶ良くなって来たけど、まだ完璧ではない。シーイングが悪いので
       あっているのかが良く分からない状態。セルを含めて20kgもあるので、取り外し取り付けが大変。
       木星の方は、11月から観測を始めてスケッチを20枚ほど描いた。今朝も2枚作成した。
       今朝はシーイングが良く、また今シーズン初めて大赤斑から後方に当たった。
  石橋  :相模原から来ました。今年は1月から2月にかけて南米に行ったが雲が多く、星空を満足には
       見れなかった。インドネシアの日食は天気が悪そうなので行かなかった。春はシーイングと天気が
       悪く、夏は晴れない日が多かった。今まで使って来たビデオはトラブルが多くなって来たので、
       カメラを購入しテスト中ですが、少し撮れて来た。使っているニュートンが回転せず両側に
       接眼部がある特殊なタイプなので、斜鏡の向きを変える時の光軸調整に苦労している。
       国立天文台の渡部副台長の広報20周年記念パーティに参加したら漫画家の藤井龍二さんに似顔絵を
       描いてもらえた。(詳しくは星ナビの2017年1月号の63頁を参照方)
  水元  :月惑星研究会に入ったのは1967年、1970年代は観測を行っていたが、それ以降は観望のみで観測は
       やっていなかった。今年、観測を再開。観測は楽しい。観測すればするほど面白みが増します。
       観測だけでなく、現象をグラフや展開図に描く昔のことを調べるなどの繰り返しで、知識が
       深まります。明治大学天文部OBで第4代幹事長、当時の天文部には望遠鏡が無かった。
       年間予算が3万円では望遠鏡購入も大変で、苦労の末に足立光学15cm反経を買った。
       1923年に刊行された古い書籍(Splendour of the Heavens)をインターネットからダウンロード、
       レタッチした物を持って来たので回覧します。アントニアジやフィリップスのスケッチが満載です。
  高橋  :明治大学OB、大天連の事務局長を務めた。最近は息子に望遠鏡を買い、月や木星を観察している。
       中古の家庭用のプラネタリウムを購入し公民館で上映している。
  三谷  :茨城から利根川・荒川・隅田川・多摩川を渡って2時間半かけて来ました。天文部の夏合宿以来、
       望遠鏡は見ても望遠鏡で見ていない。60歳70歳台の老人の草野球に参加している。来年4月に
       還暦や古希の野球大会がある還暦野球は58歳以上、古希野球は68歳以上。古希野球のメンバーが
       少ないので、63歳の私が参加することになった。
  平林  :この会では、私と成田さん、唐澤さん、水元さんなどが古いメンバー。この会が出来たのが1959年、
       第一期の最盛期は1960年代半ばまで。その後再興した時に水元さんが加わり1970年代に活躍された。
       1982年に惑星ガイドブックを執筆。その時土星を含め、かなりの部分を水元さんがまとめられた。
       上質紙を使うなどで高価格となり発売部数は少なかった。でも、勉強するには良い本です。
       温度順応の話が出たが、今使っているのはオープンフレームなので筒内気流の影響はほとんど無い。
       以前使った20cm木辺鏡の時は筒内気流に悩まされた。シーイング・鏡面・光軸合わせの3点が良ければ、
       そこそこの画像が得られると思っている。今年は、3惑星揃って西に傾き、特に火星は高度が低く
       消化不良だった。天候も悪かった。来年になり暖かくなったら再開しようと考えている。
  鈴木(光):この会と木星会議の会計を務めている。

       例会の様子

1.木星の近況(堀川)

  12月9日と10日のMarco Vedovato氏が作成した木星展開図に各部の模様の名称を追記した画像をを使って
  各部の様子を説明された。

  1)今の木星面で一番目立つのは大赤斑で赤い状態です。前回の例会で紹介した7月の画像と比較すると、
   大きな変化が2点ある。一つは、NTBs jetstream outbreakの発生、もう一つはSSTB AWO同士の合体です。
   前回の7月にはNEBの北側には目立った模様が見えていなかったが、合の間にベルトが発生した。
   このエリアには、木星面で最も高速のジェットストリームが流れているが、通常は目立った模様がなく、
   ジェットストリームの流れは目立たない。その部分に時々突発的な活動が発生し、ベルトが形成される。
   その現象がNTBs jetstream outbreakです。
   合の時期の変化の2件目は、SSTBに並んでいた9個(A0,A1,A2〜A8)の白斑の2個(A0とA8)が合体した事です。
   現在は、白斑はA1〜A8の8個になっている。

  2)NTBs jetstream outbreakによりNTBが復活:
   この現象、古くはNT Current-C(北温帯流-C)と呼ばれていた。NT Current-Cとは、このエリアを流れる
   高速のジェットストリームのことです。木星の経度系は赤道付近の体系Tとそれ以外の体系Uがあり、
   体系Tは体系Uより5分/日ほど早いが、NTBs jetstreamはその体系Tより早いスピードで流れている。
   以前はそこを流れる斑点の活動をNT Current-Cが出現と呼んでいた。BAAのJ. Rogers氏が呼び方を変えて、
   高速のジェットストリームをNT Current-Cとし、このエリアに出現する更に高速で移動する非常に明るい
   白斑をNT Current-Dとしたので呼び方が混乱した。その結果として、NTBs jetstream outbreakと呼ばれる
   様になった。
   2016年の合(9/26)の後、今シーズン最初の画像である宮崎氏の10/16の画像に暗斑が写っていたが、
   解像度が悪いので誰も気が付かなかった。10/19にNASAのG.Orton氏が、木星探査機JunoのperiJove-2
   (2回目の木星接近)の地上支援としてハワイのIRTF望遠鏡で観測時に撮影した赤外画像に、非常に明るい
   Leading spotとホットスポット(暗斑群)が写っていた。JunoのperiJove-2の観測自体は失敗だったが、
   木星接近時に遠方から撮影した10/14の画像に暗斑群が写っていた。
   Juno計画に協力していたJ. Rogers氏は、数多くのデータを入手でき、そのデータから10/14の木星面の
   展開図を作成された。その展開図には4個の白斑と多数の暗斑が描かれているが、確かな白斑は2個と思われる。
   白斑と暗斑の移動速度差から、NTBs jetstream outbreakは9/15頃に発生したと推測される。
   また10/6から10/8頃に二次的な活動が起きた様です。Leading spotの速度はT系に対して-5.3°/dayで、
   風速にして170m/s、自転周期換算すると9h46m56sで、暗斑群の移動速度は、自転周期換算すると9h50m程度と
   白斑より遅い。
   今回のNTBs jetstream outbreakは正に合の時期に発生したので、Junoの観測が無ければ、詳細は不明だった。
   白斑は11月始め頃に暗斑群に追い付いた時点で消えて見えなくなった。現在は暗斑群が繋がり濃いベルト状に
   なっている。11月後半になるとベルトは北側に膨らんで太くなっている。ベルトの色は最初は煙色(青黒い)
   でしたが、今は茶色になっている。NTrZは薄暗くなり、傾いたフィラメント模様が見られる。
   NEBnはボコボコしており、大きな白斑が見えている。20年近く存在している大きな白斑WSZは、小さな白斑に
   なっている。
   NTBs jetstream outbreakは1990年から十数年間は休止していたが、1970年からほぼ5年周期で発生している。
   過去46年間で8回起きているが、その内の4回が合の時期に発生している。

  3)SSTBの白斑の合体
   2008年頃からSSTBには9個の白斑があった。2016年の8月頃には、A8,A0,A1の3個が接近していた。2016年の
   10月から11月頃に、GRSとBAが会合したが、そのタイミングで前述の3個の白斑も会合の3重会合となった。
   3重会合すると白斑が合体することがある。その様なタイミングだった2003年3月にも白斑が合体した。
   SSTBの白斑は高気圧的な渦で半時計回りに回転しているので、2個の白斑が合体する時は、お互いが半時計
   回りに回転して合体する。今回もその様な動きで合体した。白斑は多い時でも9個が最多。現在は8個だが、
   間隔が広いA5とA6の間に小さな白斑が2個見えている。この2個は、消滅する可能性もあるので、しばらくは
   様子見です。

  4)その他の模様は大きな変化が無い。特に南半球は変化が少ない。
   各部の様子は、下記にリンクしている堀川氏の資料の6頁「その他の木星面」に示されています。

  5)STBの変化
   現在はベルトとしては見えていないSTBの変化に関しては、堀川氏の資料の15頁「STBの活動サイクル
   (最新版)」に示されています。また、STBとSTZの暗斑の動きに関しては、堀川氏の資料の8頁「STB−STZの
   状況について」に示されています。

  6)今シーズンの注目点
   mid-SEB outbreakの発生が要注意。mid-SEB outbreakとは、SEB内部で起こる激しい白雲活動のことで、
   GRS後方に見られる白雲領域(post-GRS disturbance)とは異なる現象です。SEBが濃化安定な時期に発生
   する。SEBZのbargeが発生源になるケースがあるので、現在、体系IIで40度から50度に2個あるbargeに要注意。
   bargeが消え、その部分にメタンブライトな白斑が発生するのが前兆現象です。
   
  堀川氏の解説資料 →  堀川氏の解説資料(PDFファイル)


2.簡単画像処理ソフトImPPGの紹介(山崎)

  Filip Szczerekさんが製作したImPPGと呼ばれるアプリはフリーのツールで、下記の機能があります。
  ・Deconvolution処理(Lucy-Rechardosn)
  ・Unsharp Masking処理
  ・レベル調整、ガンマ設定
  ・上記パラメータを複数の画像に適応させる、バッチ処理

  基本はこれだけですが、使い勝手が良く、ROIで範囲を絞ればパラメータの変更に画像がダイレクト反応するので、
  微調整がし易い点が評価できます。開発のコンセプトは太陽のHα画像を処理するためのようで、チュートリアルも
  Hα画像で説明しています。とにかく操作が簡単なので、最近の月・太陽・惑星の一部はこのアプリで処理
  することが多いです。
  ・フリーのアプリでDeconvolutionができる点がよい。
  ・パラメータ用のスライダーが3つあるだけなので、使い方にさほど悩まない
  ・スライダーの動きにレスポンスよく画像が反応する。 ※ROIで範囲を絞っている場合
  ・シーイングの悪い日の惑星については、模様の抽出がRegistaxより簡単?
  ・シーイングの良い日の惑星については、Registaxの方が効果がある?

  ただし、RegistaxのWavlet処理より性能が良いわけではありません。昨年のシーイングが良い日の木星画像を試して
  みましたが、Registaxで処理した画像の方が解像度はよかったです。処理して気になったのは、鮮鋭化の過程で
  なんらかのノイズ低減処理が行われている感触があります。Registaxと比較するとノイズにより荒れが少なく、
  これが良くも悪くも結果に影響しているのかもしれません。

  なお、どのタイミングでこのアプリを使用するかですが、私はスタック後の画像をこのアプリで処理しています。
  その場合、Registaxは使用しません。また処理後に、ステライメージで画像復元処理を追加する時もあります。
  ※ 月・太陽の場合は、そのままPS行きです

       ImPPGの処理画面

       ImPPGのサイト
       ImPPGのTutorial


3.初期の月面惑星研究会の様子(水元)

   月惑星研究会に入会したのは1967年。会の創設者の一人である城谷氏に誘われたのが切欠で、その時に渡された
  のが、ガリ版刷りの観測年報No1で、月のスケッチが主体でした。当時は月面惑星研究会という名称でした。
  月のスケッチは結構難しく、木星より難しかった。当時の望遠鏡は口径10cm程度で口径15cmは珍しかったので
  観測の中心は月だった。活動内容は、まず観測目標を定め、分担してスケッチと考察を作成し、会報としていた。
   私と同時期に入会したのが近内氏、坪野氏、斉藤英明氏、安達氏、石橋氏などでした。スケッチが主流だったけど
  石橋氏や近内氏は写真を撮影されていた。渡辺正明氏の銀塩3色コンポジットはセンセーショナルだった。
   例会は平林氏の自宅で開催され10名程度が参加し、各自のスケッチを評価するなどの活動だった。スケッチから
   展開図を作って観測に役立てていた。スケッチ派は少なくなったが、写真とは違う面白みがある。
  スケッチでも画像でも求める所は、惑星の大気の変化であり、その変化の原因や規則性、過去の現象との比較など
   の研究でした。1923年頃に木星のカレントなる考え方が整理され、火星は運河論争がされていた。観測した日時が
   記載されていると価値がある。昔の観測記録は大切である。30年ぶりに観測を再開するにあたって、過去のものを
   含め文献やインターネットの情報を見直した。
  昔は電卓がなかったので、各種データは筆算で求めた。メールどころか電話も自由に使えなかったので、連絡は
   手紙や速達だった。当時からスケッチの取り方、記録の残し方、現象の解析が重要である。
   

4.変光星観測者からの感想(永井)

   まず驚いたのは、自己紹介に1時間もかけることと、当日に発表内容を決めることでした。変光星の会は、
  一人20分の発表で学界的な運営です。天文学の目的は、それぞれの起源を求めることです。
   宇宙の起源はかなり分かって来ている。太陽系の起源は、京都大学の林教授が京都モデルを作成した。
  アルマ電波望遠鏡群により太陽に近いTタウリ型星の観測が行われている。Tタウリ型星は核融合まえの重力で
  光っている星で、その回りには原始惑星系円盤が形成されている。原始惑星系円盤の中に既に惑星が形成され始めて
  いる。京都モデルでは、太陽が生まれ、その周辺に惑星が生まれる様に書かれているが、そうでは無いと分かって来た。
   太陽系から最も近いプロキシマ・ケンタウリには複数の惑星があり、その中の1つはハビタブル・ゾーンにあるので
  その惑星は楽園との意見があった。しかし、低温度星のプロキシマはスーパーフレアーを多発しており、その惑星は
  地球の公転軌道よりプロキシマに近いので、惑星の大気は剥ぎ取られ死の世界と思われが、磁場があれば守られる。
  木星もそうだが磁場があればオーロラが発生する。その様な意味で木星探査機JUNOに興味があり、その関係で月惑星
  研究会に興味を抱き参加した。この例会に参加し、天体写真が凄いと感じた。変光星を毎月4万枚撮影している。
   12月20日のイプシロン2の発射を見たいと思っている。前回のアストロHも関東の海沿いから飛行中のロケットの
  航跡を見れた。関東の南岸でも高度20度程度を飛行するの見れます。


5.月惑研究会の今後、次回木星会議、その他(田部)

   月惑星研究会のメインの活動は、国内外から送られて来る報告のHPへの掲載です。池村さんが対応出来なくなり
  対応者の補強と、現在旭川に置いてあるサーバーをどうするかが課題である。会のHPは世界的に評価されており、
  続けられる限り続ける方針とし、HP掲載担当者を募集したい。
  サーバーはレンタルサーバー利用となるので、費用が必要なので、例会参加費の300円を継続したいと思っています。
  
   会の発展に功績を残された方を表彰する件について検討したが課題もあり、次回木星会議時に実現を目途に詰めて
  いくことになった。なお、表彰のタイミングに関しては木星会議と月惑星研究会は別であることに考慮が必要である。
  また、木星会議後の懇親会で表彰する案もある。
  
   次回木星会議開催地候補について東京と米子の案があり今後継続して検討していくことになった。
  木星会議の開催タイミングは、木星会議の結果を生かす観測を行う為に本来は衝の後だが、合の時期になって来ている。
  その様な意味で今年は9月に開催したい。学生には夏休み中の8月が良いが。今年は米国の皆既日食がある。

   デジタル化したスケッチが膨大にある。スケッチは、国立天文台の博物館プロジェクトに渡したが、デジタル化した
  データをWEBで公開したいが、その為には本人の了解が必要だが、既に他界した人もいる。基本的には公開不可以外は
  Webで公開する方針。データ容量は検討が必要。ダウンロード制限の検討も必要。
  
   観測報告をHPに掲載しているのは、掲載させてもらっているのか、掲載してあげているのかの整理が必要。
  基本的には掲載してあげていると理解しており、HPにもその旨は記載されている。(米山)

6.インパクトベイズンと対極点の地形(三品)

   2016年3月10日に再放送された、”月のミステリー 奇妙な発光現象の正体は?”の中で、ブラウン大学
  のシュルツ教授の実験が紹介されていました。それは、巨大クレーター、エイトケン盆地ができた小惑星
  (直径200m)の衝突が、月の内部を伝わり、月の反対側にまで大きなひび割れを発生させたという仮説を検証
  するための行った実験です。実験の結果、衝撃波が月の表面に円形のひび割れを生み出しました。
   アメリカの月探査機GRAIL(2011年12月から1年間、月を周回し観測した)が、月の地下40kmより深いところ
  から続くひび割れを探査した結果、月の表側の円形の分布が見られ、これは、シュルツ教授の実験と符合する
  ということです。
   月だけでなく水星のカロリス盆地はその対極点に、「たくさんの直線状の丘陵が複雑に錯綜する地域が
  存在」しています。(渡部潤一/渡部好恵著、「最新 惑星入門」、P61、朝日新書574、朝日出版、2016年
   これを、”Antipodal effect(対極点効果/対蹠点効果)”と呼び、Shock Dynamics_ Antipodal effects
  という解説のWEBもあります。

    火星に関しては1978年にJ.E.Peterson他が Antipodal Effects of Major Basin-Forming Impacts on Mars
  [Lunar and Planetary Science IX: 885?886] の中で、ヘラス(40°S,S9S°W)の反対側,(40°N,112°W)に
  アルバパテラ(Alba Patera)という火山があることを指摘し、さらに、大シルチスベイズン(Syrtis Major basin),
  (10°S,110°W)の反対側がシリア平原(Syria Planum)の西縁になること、イシディスベイズン(Isidis basin)
  (15°S,91°W)の反対側にシナイ平原(Sinai Planum)があること、さらに、アギェレ(Argyre)の反対側も同様に、
  大きなインパクトが、対極点の地形形成に影響している可能性があることを指摘しました。

   David A. WilliamsとRonald Greelryがヘラス、イシディス、アギュレを生成した小天体の衝突が火星内部や
  対極点にどのように伝わるかをコンピュータで計算して解析し、
  1994年に”Assesmnt of Antipodal-Impact Terrains on Mars [ICARUS 110,196-202(1994)]を発表しました。
  衝突のエネルギーが火星の内部を減衰しながら伝わり、対極点に集中するということです。

  MarsAntipod.jpg 
  出典:Assessmnt of Antipodal-Impact Terrains on Mars,ICARUS 110,196-202(1994)

                                                 以上

7.その他

  次回例会は3月26日の予定。

2次会:向ヶ丘遊園駅近くで21名参加の懇親会でした

          懇親会の様子

          懇親会の様子

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