月惑星研究会例会通信 No.163

■ 日 時 : 2016年6月5日(日曜)13時−17時半

■ 場 所 : 明治大学生田キャンパス第2校舎5号館5304教室

■ 出席者 : 31名(敬称略、自己紹介順)

  鈴木 達彦、田部 一志、堀川 邦昭、阿久津 富夫、松浦 啓介、平林 勇、石橋 力、縄田 景太、
  上田 真由、森谷 諒、三谷 祥二、榎本 孝之、鈴木 光枝、高田 哲朗、長瀬 雅明、諸岡 等、
  海老塚 昇、黒木 春裕、根津 拓弥、本木 稜、成田 広、冨田 安昭、小澤 徳仁郎、三品 利郎、
  Javier Peralta(ハビエルペラルタ)、Yeon Joo Lee(李蓮珠)、小山田 博之、山崎 明宏、
  瀧澤 誠、米山 誠一、藤巻 徹
          集合写真


■ 内 容

0.自己紹介

  鈴木(達):本例会の議長、明治大学OB、木星が大好き
  田部  :ヨーロッパ(ニース)に行って来た。面白かった。
  堀川  :田部さんと一緒にニースに行って来た。後で報告します。木星のスケッチは目標の200枚を達成。
       後は梅雨の天候次第。
  阿久津 :栃木在住です。一ヶ月ほど前に仕事の関係で以前暮らしていたセブ島を訪れ、のChristopher Goの
       所で一週間ほど惑星の撮像をした。その件は天文ガイド7月号に載っている。惑星観測は長く
       やっているが日本は気流が良くないので、何とかしたい。
  松浦  :天文と写真の2本立て、最近は写真が主、天文の知識が役立っている。新しいネタを得る為に、
       時々天文の集まりに参加。写真展を開いている。最近は4月に実施した。次回は未定。
  平林  :ASI224MCで撮影を開始、今までのPC(古いWin7)の性能が悪いので新しいPC(Win10+SSD250GB)を入手。
       AutoStakkert2だと30秒程度でスッタクでき、そのままRegistaxに画像を引き継げるので便利。
  石橋  :奥様の希望で海外旅行、去年の夏に南米、今年の1月にも出かけた。その時のビデオ編集で時間を
       取られている。カメラの買い替えを検討中。
  縄田  :明治大学3年天文部惑星班、屋上の望遠鏡が斜鏡のネジ緩みで光軸がずれているが直せなかった。
       1年は35名、内2名退部。
  上田  :明治大学3年天文部惑星班、昨年の12月から川崎の宙と緑の科学館でバイトを始めた。プラネを見て
       天文の知識を得ているので、これからの観測に生かしたい。
  森谷  :明治大学2年天文部惑星班、忙しくて観測できず、友人が取ったデータを処理している。
       7月2日(土曜)に生田キャンパスで七夕観望会を開催予定。小学生向けなので、知り合いに子供が
       いたら誘ってください。(なお、森谷さんに今回の例会の会場を確保して頂きました)
  三谷  :PCが壊れた。一日だけ復帰したのでヨドバシ.COMで新しいPCを購入した。惑星の観測は、高度が
       低いので前の家の屋根の熱気で苦労している。
  榎本  :理科大OB、宇宙研で金星の研究を行っている。月惑星研究会の例会は昨年の1月以来、
       現在一般企業への就職を検討中。惑星観測はしていないので、最新の木星の情報を得に来た。
  鈴木(光):月惑研究会の会計 法政天文研究会OB。会計が赤字、会場費が高かったので借金が多い、
       今後暫くは、会場費ではなく例会会費として毎回300円とします。
  高田  :明治大学天文部OB、社会人となり惑星観測の再開を考えている。会社でも宇宙サークルを作って
       観測を行っている。CMOSセンサーの研究を行っている。会社はソニー。
  長瀬  :天文再開、月惑研究会1年生、CMOSで惑星を撮影中。以前は観測所の振動や風の影響が気になったが
       今はシーイングに気になっている。
  諸岡  :東海大学OB、会場の近くに住んでいる。昨年の夏に大阪に転記したが、今年の4に戻って来た。
  海老塚 :東海大学OB、大天連事務局長を勤めた。現在理化学研究所ですばる望遠鏡やTMT用の新しい
       回折格子の開発に携わっている。
  黒木  :東海大2年、月惑星研究会の例会初参加。
  根津  :東海大2年惑星班班長、月惑星研究会の例会初参加。惑星班に新入生2名加入、31日に火星を観測。
       雲が多かったけど、終電近くになり雲間から火星が見えた。天文部40名位、新入生20名位。
  本木  :東海大1年、月惑星研究会の例会初参加。
  成田  :多摩天体観測所で公開天文台(28年前に建設)を運営している。お客が少ない、是非見に来てください。
       目が衰えており望遠鏡より画像の方が楽しめる。
  冨田  :群馬星の会、今は火星を観測、シーイングが悪い、回りが道路でトラックの振動が多く困っている。
  小沢  :八王子、木星主体で火星や土星を観測。5月28日、明るい時間帯はシーイングが良かったが、
       徐々にシーイングが悪化した。木星のあと火星と土星を撮影したが、処理する気が起きないほど。
       木星だけは良い画像が取れた。今年のシーイングは去年より悪いと感じている。
  三品  :横浜から来た、Windtyを参考にして観測している。良いシーイングに出合えていない。
  Peralta :スペイン出身。Ricaldo HuesoやSnachez-Lavegaの指導で学位取得。Venus Expressのプロジェクトに
       参加。現在相模原の宇宙研で“あかつき”のプロジェクトに参画している。
  Lee   :韓国出身、大気科学(波動や力学)が専門。ドイツのマックスプランク研究所で学位取得。
       Venus Expressプロジェクトに参画。現在相模原の宇宙研で“あかつき”プロジェクトに参画している。
  小山田 :東北惑星研究会、最近は都内に出張が多い。最近藪に入ったら虫に食われた。
       東北惑星研究会の活動は停滞中。勤続20年のリフレッシュ休暇で、7月にニュージーランド行く予定。
  山崎  :町田在住。自宅に駐車場を作成中。駐車場の上に天文台を考えている。駐車場の工事中は望遠鏡を
       設置できないので惑星撮影が滞っている。社員旅行で宮古島に行った。星は見なかった。
       ニコニコの生放送デ望遠鏡の操作などで協力。
  滝澤  :前回に続いて参加。ASKOの26cm焦点距離2000mmを5万円で入手。鏡筒内気流改善の改造を思案中。
       東芝に勤務、技術者がソニーに移った。
  米山  :前回の例会後、GRSの赤みのデータ化を始めたが、天文ガイドから記事の執筆依頼やビクセンから
       惑星画像提供依頼が来て中断。シーイングが悪く、横浜南部は雲が出易く土星の撮影が出来ない。
       ASI224MCが壊れた。岩政さんが貸してくれた。修理が一ヶ月の予定が10日ほどで戻って来た。
  藤巻  :茨城から来た。筑波エキスプレスを使えば近い。例会2回目の参加。ASI224MCで撮影を始めた。
 

       例会の様子

1.木星の近況(堀川)

  5月21日から23日の永長氏の木星展開図を使って各部の様子を説明された。

  1)3月末からの大きな変化は見られない。3月末に活発化したpost-GRS disturbanceが沈静化傾向
   3月はpost-GRS disturbanceの白雲が大きかったが、今は小さくなっている。
   post-GRS disturbanceの白雲はGRSに近づく様に動いている。GRSから離れた場所に小さな白斑が
   発生し、GRSに近づきながら発達・拡大し、GRSに近づくと変形し拡散している。
    今回の活動はpost-GRS disturbanceが活発化したもので、mid-SEB outbreakではない。

  2)NEBは3から5年周期で幅が変化する。今回のNEBの拡幅は、1月頃はWSZの後方で拡幅域が拡大していたが、
   3月頃に拡幅域の後端に高気圧的な暗斑が一時的に発生。暗斑が消失後、拡幅域が明化し始めた。
   現在は拡幅が終わり、WSZ後方のNEBは他の部分と同じ太さになっている。
   WSZは拡幅したNEBに取り囲まれた時は減速したが、NEBの拡幅が止みNEBから露出したら前進速度が
   増加し始めた。

  3)STBの3セグメント化をBAが邪魔している。可能性がある。BAは前進速度が減速している。
   BAの後方の暗班はまもなく消失しそう。STBゴースト的なものが2ヶ所にあり3セグメント傾向の表れかも。
   BAの大きさは発生から10年程度は同じだったけど、2010年頃に小さくなった。

  4)GRSに接近中だったリング状暗斑は3月後半に停滞し始め、5月後半に前進し始めた。過去にも停滞する
   暗斑はあったが前進する例は少ない。暗斑が大きくなり前進方向の流れの影響を受けた為か。

  5)GRSは赤い状態が続いている。GRSの縮小傾向は止まっており、2013年頃より少し大きくなったが、下げ止まり程度。
   現在のGRSは246度付近にある。GRSの後退速度が一時的に大きくなったが、90日変動の影響が大きい。

  堀川氏の解説資料 →  堀川氏の解説資料(PDFファイル)

  堀川氏の解説中で使用された動画(AVI)を以下にリンクします。単純にクリックしても動画が再生されない場合は、
  右クリックでファイルを保存し、そのダウンロードファイルをWindows Media Playerで再生して下さい。

  ・SEBの白雲活動の動画(AVIファイル 3.6MB)   

  ・木星面全体の動画(7.1MB)

2.Observing Venus with Akatsuki(Dr. Yeon Joo Lee)

  1)「あかつき」に搭載されている観測機器(各種カメラ)とその観測目的、観測結果を解説。
   ・1μmカメラ(IR1):下層の雲の動き、水蒸気や火山など金星の地表面の観測
   ・2μmカメラ(IR2):下層の雲の動き、一酸化炭素などの観測
   ・中間赤外カメラ(LIR):雲の温度などの観測
   ・紫外イメージャ(UVI):二酸化硫黄などの観測
   ・雷-大気光カメラ(LAC):雷放電や大気光の観測

  2)金星を周回する「あかつき」の軌道や金星との位置関係と金星の見え方、また地球と金星の
    位置関係、見え方の解説。地上からのサポート観測の必要性を解説。

  Dr. Yeon Joo Leeの解説資料 →  Dr. Yeon Joo Leeの解説資料(PDFファイル)

3.Ground-based Venus Observation of Amateur Astronomer for Akatsuki(Dr.Javier Peralta)

  1)金星の大気循環や風の様子を解説

  2)水星観測衛星 Messenger の金星フライバイ時(2007年)の観測結果と地上からのサポート観測に
    関しての解説

  3)金星探査機 Venus ExpressとMessengerによる観測から得られた金星大気や風に関しての解説

  4)「あかつき」をサポートする地上から観測体制、観測方法などの解説

  Dr. Javier Peraltaの解説資料 →  Dr. Javier Peraltaの解説資料(PDFファイル)

Dr. Yeon Joo LeeとDr. Javier Peraltaのお二人が、例会に参加された目的に関する田部氏の補足

    お二人が月惑に来られた趣旨は、Akatsukiがいろいろな都合で観測できない時期に地上からの観測で、
   データの欠落を補えないかということです。
   簡単にいうと、Akatsukiは1台しかないので常に片面しか観測できません。ある時期は地球と反対側に
   なりますが、別の時期は、地球と同じ方向からの観測となります。また、長楕円の軌道なので、連続した
   観測の間、金星の全面が観測できたり、一部しか観測できなかったりします。 
   これらを補うため、世界中のプロ、アマ問わず広く呼びかけを行っているところです。

4.火星の近況(三品)

  1)エリシウムのダストストーム

    5月26日にBAA(英国天文協会)火星セクションのデイレクター、リチャード・マッキムさん
   から”5月21日〜24日にエフライン・モラレス・リベラ(アグアディア市,プエルトリコ)さんが撮影した
   画像は、エリシウムの西(即ち、自転の逆方向)の縁にダスト明るい黄色の筋状模様の変化をはっきり
   と示している。”との指摘がありました。しかしながら、その後、大きな変化はまだ起きていません。

  EfrainMorales160524c1.jpg

  2)オリンポスの雲

    5月5日に、イギリスからダミアンピーチさんが3月19日に撮影した火星の画像が届きました。
   丁度オリンポスの頂から雲がたなびいているようすが写っています。
  DP0319JUPOS.jpg


   下の図は、この時刻の火星の様子をMars Climate Database v5.2でシミュレーションしたものです。
   (Mars Climate Database v5.2 http://www-mars.lmd.jussieu.fr/mcd_python/)
   上は水蒸気の量と風、下は気温と風の図です。赤い丸の部分を見てください、オリンポスから北西に向かって強風が吹いています。
  0319WIND1.jpg


  3)南極フードの縮退

   下の図は、Jennifer L.Bensonさんらが、”Mars’ south polar hood as observed by the Mars Climate Sounder”、
  (JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH, VOL. 115)に掲載している、南極フードと南極冠の縁の緯度変化を
  表すグラフです。南極フードは、MROのMars Climate Sounderが赤外線(12μm)を用いて、氷の雲の濃さ(光学的厚さ)を
  観測したデータを用いています。南極冠の北の縁は、Titusさんらが、TESにより観測したデータ(Titus, T. N. (2005), 
  Mars polar cap edges tracked over three full Mars years, Lunar. Planet. Sci., XXXVI, Abstract 1993)を用いています。
  こちらは、TESの温度データ(30μm)を用いて、温度の急激な変化からCO2の氷の極冠と氷の極冠を見分け、極冠の
  縁を求めています。
   Ls150°あたりでは、南極フードが南極冠の上にかぶさり、45°Sあたりまで覆っています。Ls175°を過ぎると、
  南極フードの北端が南に南極冠が現れます。

  fig2-polarhood.jpg

   5月22日と5月23日に撮影された画像です。Lsは156°〜157°です。いずれの画像も目で見た印象を忠実に表現しています。
  M160522 T. Ishibashi.JPG

  m160522_sy.jpg  m160523_.jpg


  南側の縁に白い雲が写っています。これが南極フードです。
  Winjuposを使って、白い雲の緯度を調べると、ほぼ、40°〜50°になっています。
  ikemura-0523wj.jpg


  池村さんの画像で展開図を作りました。
  ikemura0523.png

  南極から見た展開図です。
  ikemura0523p.png

                                                    以上

5.CMOSセンサーの実力(山崎)

  PCカメラのイメージセンサーとして使われているCCDセンサーとCMOSセンサーに関して、その構造と特長を解説された。
  CCDは、バケツリレー方式で高効率、画素毎のばらつきが少ないが、製造が難しくSONYなど一部の会社しか製造できなかった。
  CMOSは、各画素にアンプがあり、アンプ毎のばらつきでムラがあり、フォトダイオードの作りが悪いと暗電流が酷かった。
  しかし、製造が容易なので多くのメーカが参入し、技術革新やコスト削減が進み、CCDを凌駕した。
  数種類のCMOSカメラをテストし、各カメラの性能を比較した。
  
  現在のCMOSセンサーでは、・高感度(CCDセンサーより感度が高い)、・転送レート向上によりデータの取得数が増大、
  ・低ノイズ化が進み、その結果、ノイズの少ない画像が得られ、強めの画像処理に耐えられるようになった。
  
  現在開発中の有機CMOSは、受光光量の増加や、ダイナミックレンジの拡大が可能であり、期待されている。
  
  山崎氏の解説資料 →  山崎氏の説明資料(PDFファイル)

6.ニースで開催されたJuno Conferenceの報告(堀川)

  5月12日から13日にフランスのニースにあるコートダジュール天文台で開催されたJuno Conferenceに田部氏と堀川氏が
  参加され、その報告です。Juno Conferenceは、ジュノー探査機のミッションを地球からアマチュアがサポートする事を、
  目的とした会合で、世界中の著名なプロとアマチュアの木星観測者が集合した。
  
  堀川氏が紹介したJuno Conferenceの様子 → 堀川氏の報告資料(PDFファイル)
  
  Juno Conferenceに関する公開資料を以下にリンクします。
  
  ・Juno Conferenceの模様(スカイアンドテレスコープ誌のニュース)
  
  ・Juno Conferenceでの発表資料

7.地球照の分光観測に関する続報の中間報告(海老塚)

  理化学研究所の海老塚昇博士による地球型惑星探査を模擬した地球照の分光観測に関する続報です。
  スリットビューア追加など改良された機材を使い、ヨーロッパやアフリカからの反射光による地球照が観測できる
  2016年の4月中旬と5月中旬に、明治大学生田キャンパスで明治大学天文部惑星班の協力を得て、4夜観測を行い、
  2夜でデータを取得できた。
  現在、明治大学天文部惑星班と共同で観測結果を解析中。・・・続報に期待です。
  
  海老塚氏の解説資料 →  海老塚氏の説明資料(PDFファイル)

8.その他

    次回例会は8月28日(日曜)に明治大学-神田駿河台キャンパスで開催予定。

2次会:向ヶ丘遊園駅近くで懇親会でした(16名)



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